今年度は、研究計画の初年度に当たり、現行の都市排水施設に比べ、世界中で広く採用されている効率優先主義の都市排水システムの計画理念を日本で仮に採用した場合、何がどう変化するかについて検討を行った。具体的には、二つの方法により比較を行った。一つは、定性的な比較で、効率優先主義の計画理念を忠実に守って建設された中国のある新興都市の事例について調査し、その水文学的条件、排水効果等を日本のモデル地区のそれらと比較検討したものである。もう一つは定量的な比較検討で、日本のモデル地区について、効率優先主義の計画理念に基づいて仮想の排水システムを構築し、排水シミュレーションにより既存の排水システムと比較する方法である。今年度は、仮想排水システムの構築と、シミュレーションモデルの構築が当初の計画通りほぼ完了し、モデルを運用するために必要なデータベースがいま構築中であり、研究計画は、全体として予定通りに進行してきている。シミュレーションモデルの基本構成は、人工排水施設と雨水排水先(都市河川等)については一次元非定常流モデル、排水区については二次元非定常流モデルからなっており、地形、道路、住宅等の地理情報についてはGISを通して取り込めるようになっている。次年度は、このシミュレーションモデルを用いて、異なる都市条件と降雨条件の組み合わせに対し、限界投資効果(水害被害削減効果)が限界コストに等しくなる計画降雨規模を計算する。こうやって決定された計画降雨規模を都市条件や降雨再現期間等との関係について分析し、従来のシビルミニマムという計画手法によるものとも比較しながらその特徴と課題を明らかにする。
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