本研究は、都市雨水排除システム計画の方法論について検討したもので、まず、近年多発している都市型水害の原因を明らかにし、その結果を踏まえて、都市排水対策のあり方を論じ、最後に、最も重要かつ効果的な都市排水対策が都市雨水排除システムの計画理念の見直しであるとして、新しい計画設計理念を提案するとともに、シミュレーションを行い、その結果に基づいて提案した計画設計理念の特徴と可能性について分析を行った。研究結果をまとめると次のとおりである。 まず、強い短時間降雨の増加傾向を長期間の降雨量観測データの分析結果から確認した。つぎに、日本の都市雨水排除システムの能力がしばしば不足する原因が、シビル・ミニマムという都市雨水排除システムの計画理念にあったこと、そして、この計画理念の見直しなしには都市型水害問題の本質的解消が不能であると分析された。この結果を受けて、シビル・ミニマムに変わりうる計画設計理念として、安全設計理念を提案し、シミュレーションの結果に基づいて、安全設計理念が、都市雨水排除システムの計画設計理念として有効だけでなく、柔軟性、操作性、水質対応、従来計画理念との整合性などにおいても優れており、特に、自然との共生を図ろうとしている意味で、持続可能な都市計画の理念とも完全に一致していることが示された。 シビル・ミニマムという現実的実現可能性のみに依拠した計画理念の見直しを提案したことで、効果の少ない小規模な人工浸透貯留施設や、金がかかりしかも問題点の多い地下河川といった従来の対処療法的な都市水害軽減対策から脱却し、都市排水の本来の主役である下水道の能力アップを図り、都市水害対策の根本的転換につながるものとして意味がある。
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