研究概要 |
崩壊地点における浸食防止ならびに二酸化炭素固定等の環境対策の一つとして,植生シート敷設による法面保護策が採られる.植生シートには数種類の種子と栄養分が含まれ数日から数週間で萌芽する.植生が生長し緑被が支配的となることで地表部ならびに地下根系のネットワークが形成され,地盤を緊縛し浸食やせん断破壊の低減が期待できる.この工法は植生の生長エネルギー(自然治癒力)を利用するものであり,エネルギー効率が高い.また,コンクリート吹付け等による堅固な法面保護工法とは異なり施工性にも優れ,水源涵養力を保持し,時間の経過に従い安定性が向上する特長を有する. 本研究では,植生シートの定着に必要な保水性を維持したままで,植生による地盤の緊縛効果を得るまでの間植生の代替として地盤を安定させ,かつ,定着後には植生の更なる生長を可能な限り阻害しないような薬剤散布による地盤安定処理策を提案し,以下の内容について検討した. (1)「つなぎ安定処理剤」および「植生シート」の併用による表土の流出量の低減についての検討 一定量,一定水勢で地表に水分(水圧)を与え,表土の流出状況について検討するとともに,浸食を抑制できるつなぎ安定処理剤の濃度や施工条件等について整理した. (2)「つなぎ安定処理剤」の濃度と植生の定着に要する時間との関係等に関する検討 現有の監視システムを用いて連続静止画像を解析し,緑被面積占有率を計測した.並行して供試体を用いた室内試験も実施し,処理剤が効果を発揮するための適正濃度(2l/m^2)を求めた. (3)「つなぎ安定処理剤」の濃度と保水性との関係の検討 室内保水性試験用土壌遠心分離機を用いた保水性試験ならびに屋外実権斜面における土壌水分(体積含水比)を測定し,処理剤濃度と保水性との関係についての知見を得た.
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