研究概要 |
表層土の浸食防止策の一つとして,植生シート工法が採用される場合がある。この工法は,適用に際し施工時期が限られるといった課題がある。加えて,斜面上の豪雨によって植生シートに含まれる種と栄養分が同時に洗いだされることで,植物の生長が妨げられることが危惧される。この課題に対応するため,本研究では植生シートからの萌芽・活着が可能となるまでの間,一時的に表層土を安定させる工法を提案した。この工法は斜面や周辺環境に影響を及ぼさない処理剤を使うことが特長である。植生の活着あるいは保水性に関する屋外実験および室内実験の結果,本工法の適用性に関し,以下の知見を整理した。 1.本工法で適用したつなぎ安定処理剤の半数致死濃度は約15,000ppmである。したがって,処理剤適用直後に降雨があった場合であっても安全性は確保されると考えて良い。 2.処理剤散布量の増加に従い支持強度が大きくなり,処理剤散布後の時間経過に従い支持強度は低下する。 3.斜面の表土流出を低減させるには植生シートよりも処理剤がより効果的であり,植生シートと処理の両方を使用することで更なる浸食抑止効果が得られる。 4.処理剤の散布量が増加すると植生の生育に影響を与える。植生シートの植物の生育に適した時期は5~7月であること,ならびに処理剤の効果の減衰を踏まえた施工時期の選定が肝要である。 5.処理剤適用後も土の間隙を保持しつつ土粒子の結合を強化させる効果が期待できる。 6.提案工法を採用する際には植生の生育に適した5月頃までの期間に,2l/m^2を超えない範囲で適宜処理剤を散布して斜面の安定を図ることが好ましい。
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