真核生物の核tRNA遺伝子の中にはイントロンを含むものが存在する。tRNA^<Tyr>とtRNA^<Met-e>をコードする核遺伝子のみが植物ではイントロンにより分断されている。tRNAイントロンのスプライシングはtRNAに特異的な3種類の酵素による切断・連結反応により進行する。これら酵素は核以外に葉緑体とミトコンドリアにも局在することから、核内でのtRNAスプライシング反応とは異なる、何らかの機能を担っているものと推察される。本研究は植物前駆体tRNAスプライシング装置を構成する酵素タンパク質の新規機能を探索・解明することを目的として行う。平成20年度においてこれら3種の酵素タンパク質の細胞内局在を生化学的な手法で確認するために、シロイヌナズナ由来のスプライシング酵素をコードするcDNAとGFP遺伝子とのキメラ遺伝子を植物形質転換ベクターに組み込んだ。ベクターはアグロバクテリウムEHA105株を介した形質転換法によりタバコ培養細胞BY-2への導入を行っている(形質転換効率を改善するための条件検討を進めている)。また、tRNAエンドヌクレアーゼ遺伝子のイネ過剰発現株を確立した。平行して、BY-2細胞をプロトプラスト化し、細胞核、プラスチド、ミトコンドリアの単離の条件検討を進めた。確立した条件に従いGFP融合発現株から各種細胞画分を調製し、GFP抗体を用いたウエスタン法によりそれぞれのタンパク質の局在を明確にする。来年度においては、tRNAリガーゼ(RL)と2'-フォスフォトランフェラーゼ(Pt)のオルガネラでの機能探索を行うために、これら酵素をコードするcDNAの核、オルガネラのみでの過剰発現とノックダウンのための遺伝子コンストラクトの構築を進めている。
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