研究概要 |
植物ではtRNA^<Tyr>とtRNA^<Met-e>をコードする核遺伝子がイントロンにより分断されている。tRNAスプライシング機構は境界部位の切断とエクソンの連結が酵素タンパク質により協調的になされる。tRNAスプライシング酵素はオルガネラにも局在することから、オルガネラで何らかの機能を担っているものと推察される。平成21年度では連結反応に関わるtRNAリガーゼの葉緑体での機能解析に的を絞って研究を進めた。シロイヌナズナのtRNAリガーゼをコードする遺伝子(AtRL)を鋳型にして試験管内突然変異法により、1)核移行シグナル(NLS)の除去(ΔNLS)、2)リガーゼドメインの保存された触媒アミノ酸残基の置換(K152AまたはE326A)を行い、これらの組み合わせから各種変異遺伝子を構築した(AtRL ΔNLS, AtRL-K152A, AtRL-E326A, AtRLΔNLS-K152A, AtRLΔNLS-E326A)。これらを構成的に発現する組換え体(タバコ、イネ,` シロイヌナズナ)の作出をほぼ完了した。これと平行して、各種ストレスを生物に暴露することで、特定の細胞質tRNAの切断が起こり、tRNAリガーゼがその修復に関与する可能性が示唆されている。これらの報告を踏まえて、野生型タバコとタバコ培養細胞BY-2に酸化的ストレス(10mM過酸化水素)を一定時間暴露後に、破砕した組織から全tRNAを抽出し、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動法によりRNAをサイズ分画し、細胞質tRNA及び葉緑体tRNAに特異的なRNAプローブ(細胞質tRNA : 18種、葉緑体tRNA : 28種)を用いてそれぞれのtRNAを検出した。その結果、酸化的なストレスにより細胞質tRNAでは特異的な切断が観察されたものが2種、発現パターンの増減が見られたものが3種見出された。一方、葉緑体tRNAは用いた条件では有意な切断は見出されなかった。
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