研究概要 |
Segmented filamentous bacteria (SFB)は回腸粘膜に強固に付着する難培養菌である。近年、SFBの腸管への定着が腸管粘膜固有層におけるTヘルパーリンパ球サブセットのひとつであるTh17の分化誘導に密接に関連することが報告され、一本難培養菌の生物性状に大きな関心が寄せられている。本年度の研究では純化されたSFBを得るため、SFBノトバイオートマウスを作製し、その回腸内容物よりDNAを抽出した。抽出したDNAを用いてショットガンシークエンス行い、SFBの全ゲノム塩基配列を決定した。その結果、SFBのゲノムは1.6Mから成る1本の環状染色体により構成されており、GC含量は28.8%であった。染色体上には1,515個の遺伝子が同定され、代謝経路を解析した結果、アミノ酸、核酸、ビタミンや補酵素の合成に関与する多くの遺伝子群が欠損しており、SFBは多くの栄養素を宿主に依存していると考えられた。このような多くの栄養素に関する要求性が難培養性に密接に関連していると考えられた。また、SFBのゲノム上には走化性と運動性に関わる遺伝子領域が存在し、鞭毛の構成蛋白質であるフラジェリンをコードする遺伝子が4個同定された(Fla1-4)。これらのフラジェリンのうちFla1を除く3つについてはTLR5を介して細胞内にシグナルを伝達し、NF-κB出経路を活性化した。これらの結果から、SFBの栄養要求性に起因する宿主への強固な付着と定着部位への遊走に関わる分子の発現が腸管粘膜固有層におけるTh17の分化誘導に密接に関連していると考えられた。
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