蛍光染色法により、放射性同位元素(RI)を使用せずに二次元電気泳動ゲル上のリン酸化タンパク質を容易に検出できるようになった。しかし蛍光染色試薬は、一般に高価であるうえに注目するキナーゼによりリン酸化されたものと、もともとリン酸化されていたものとを区別することはできない。RIを用いたin vitroのキナーゼアッセイは、比較的安価に行なえる上に、そのアッセイ時にリン酸化されたものだけを検出できるメリットがある。一方欠点としては、当該キナーゼ以外に混入するキナーゼ活性による、非特異的な放射能の取込みが考えられ、これをいかに排除するかがRI標識によるキナーゼ基質同定法の成否を握っている。今年度は、ヒトタンパク質リン酸化酵素PKD2の基質を容易に同定する目的で、まず常時活性化型PKD2-GFPおよび不活性型PKD2-GFPを安定発現するヒトT細胞株Jurkatを作製した。これらの細胞を抗ヒトCD3抗体を用いて活性化して可溶化した後、抗GFP抗体を用いて各変異PKD2を沈降させ、これにJurkat核抽出物と放射性ATPを加えて反応させ、反応生成物を二次元電気泳動にて分離した。その結果、放射能を持つタンパク質プロットの再現性、ならびに非特異的にリン酸化されるスポットを低減させる至適条件を決定した。
|