研究概要 |
メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪型の肥満によって糖尿病、高脂血症、高血圧などの代謝異常が起こった状態である。本研究の目的は、メタボリックシンドロームと関連して低酸素障害が起こったとき、各臓器の蛋白質発現にどのような量的・質的変動が起こるのかを解析することである。解析に用いた等電点二次元電気泳動法は、様々な翻訳後修飾を受けた蛋白質の発現変動をも検出できる利点をもつ。 翻訳後修飾の解析:前年度、二次元Western blot法によってGlcNAc化修飾を検出したが、蛋白染色スポットと抗体陽性スポットのパターンが全く異なるためスポットを対応させるのが困難であった。これを解決するために、泳動した一枚のゲルを同時に二枚のPVDF膜にblotし一枚を染色もう一枚をWestern blotするReplica blotting法を確立した。これにより、低酸素ストレスによりGlcNAc化修飾が変化した蛋白質を同定することができた。 2型糖尿病モデルの解析:糖尿病は細胞への酸化ストレスを増強させこれが病態の進行にも関与することが分かっている。前年度までの研究から二次元電気泳動法で心臓組織を解析する場合、細胞骨格蛋白質の発現量が極端に多いため、それ以外の蛋白質の変動を検出できないことが分かっていた。そこで心臓を分画し酸化ストレスを反映するミトコンドリア・ミクロソーム画分を解析した。酸化ストレスの状態が異なるwildマウス、ヘテロマウス、db/dbマウスの3群を比較すると発現量が変動するスポットを検出し、いくつかの発現変動パターンに分類できた。その中でも特に興味深いものとしてATP産生系蛋白質X, Y, Zがあり、様々な翻訳後修飾を示唆するスポットの変動が示された。
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