タンパク質は構造・機能単位としてドメインを構成しており、ドメイン構成を知ることは機能を推測する上で重要である。これまでタンパク質は特異的な立体構造を作り機能すると考えられ、ドメインも構造単位として考えられてきたが、近年になって天然状態で球状構造を形成しない長大な変性領域を含むタンパク質が真核生物に多く存在し、これらのタンパク質は細胞内シグナル伝達系や、転写・翻訳制御又は細胞周期制御に関与し、その機能的重要性からも注目を集めている。昨年度までに、アミノ酸配列を構造領域・変性領域に二分するコンピュータシステムDICHOTを完成させ、ヒト転写因子に適用した内容は論文として発表した。ヒト全タンパク質の解析の解析は昨年度終了していたが、本年度はその他のモデル生物プロテオームにも解析範囲を広げ、論文にまとめた(印刷中)。モデル生物間で比較をすると、真核生物で変性領域の残基レベルでのプロテオーム全体に占める割合は30~40%であったのに対し、原核生物では10%という顕著な違いが見られた。DICHOTの特徴は、構造領域であるが構造決定されていない領域(cryptic domain=CD)を予測することである。面白いことに、CDの残基レベルでの割合はすべてのモデル生物で概ね似たような値(12~19%)となった。ヒトのタンパク質に関して細胞内局在部位ごとに、変性領域の割合を比較すると、核タンパク質が最も変性領域が多く、ミトコンドリアではもっとも少ない。様々な機能部位が変性領域に位置することは知られていたが、今回O結合型の糖鎖修飾部位が変性領域に大きく偏って存在することを初めて指摘した。これらの結果はインターネットで公開している(http:///spock.genes.nig.ac.jp/~genome/DICHOT/)
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