研究課題
刺胞動物のアカクラゲ(Chrysaora melanaster)を試料として生理活性物質の探索を行った。試料のアカクラゲは4月から5月にかけて本学実習艇「ひよどり」を用いて採集した。採集した試料をメタノールを用いて抽出し抽出物を得た。得られた抽出物を、溶血活性を指標に液-液分配、逆相オープンカラム、シリカゲルオープンカラム、逆相HPLCを使用して化合物の精製・単離を行った。単離した化合物について化学構造の解明を行った。またアカクラゲ触手抽出物中に含まれるフォスフォリパーゼA2(PLA2)の活性測定も行った。冷凍試料をリン酸緩衝液中で抽出し、遠心分離した上清を粗抽出液とした。レシチンに試料溶液を加え、生成したリゾ型リン脂質によるヒツジ血球に対する溶血活性でPLA2の活性を測定した。アカクラゲ触手から三つの溶血活性物質を単離した。NMR、MSの結果から、これらの化合物はリン脂質であるプラズマローゲン誘導体のリゾ体であることが判明した。そして、その後の実験から、これら化合物はアカクラゲが持つPLA2によって、抽出物中のプラズマローゲン誘導体から生成することが推測された。各種の刺胞動物中にPLA2の存在が報告されているが、刺胞動物由来のPLA2の詳細な性状が明らかにされた例はいまだない。また、ヘビ毒の中には筋肉壊死毒として働くPLA2が知られている。近年、オニヒトデの毒棘から得られた毒性をもつPLA2も報告されている。今回の報告は、アカクラゲ中にPLA2活性が見出された初めての例である。今後、PLA2が刺胞内に局在するのか、もしそうであるならば、アカクラゲ刺症において有毒成分として機能しているかどうかを明らかにする必要がある。
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