研究概要 |
タンパク質試料を発現する為に一般的に利用されている大腸菌や酵母では調製困難な試料を,植物細胞とウイルスベクターを用いて調製するための技術を開発している.また,H21年度には,この新技術を使って13C安定同位体標識試料を調製するプロトコルを確立した.これにより,NMRによる構造機能研究の守備範囲は大幅に広がった. H21年度内に,3次元立体構造が未知のSS結合を有する幾つかのタンパク質の調製に成功した.これらのタンパク質は,大腸菌や酵母では全く調製が出来ず,化学合成も極めて困難であった.本技術を用いた場合,目的タンパク質は可溶化分画に発現し,巻き戻し等の操作は必要なかった. 発現に成功した試料のうちの1つについて研究対象を絞り,その生理活性を調べたところ,天然由来のタンパク質と同等の活性を示すことが明らかになった.つまり,本手法で調製したタンパク質は天然由来のタンパク質と同一の立体構造を有していると考えられる.このタンパク質の3次元立体構造を決定するために13C/15N安定同位体標識試料と15N安定同位体標識試料をそれぞれ調制した.現在,各種NMRスペクトルを測定している. また,リン酸化・アセチル化などの翻訳後修飾を受けることが知られているタンパク質を発現するための系を準備した.一例として,平滑筋に由来するリン酸化されていない状態のあるタンパク質について研究を開始した.リファレンスとして大腸菌による発現系も構築し,これについては多核多次元NMR法による立体構造解析を行った.
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