本研究では、結晶中の生体高分子(タンパク質)の反応状態を時間分解顕微分光法により測定してX線結晶構造解析結果と組み合わせることで、従来のX線結晶構造解析だけでは観測困難な機能発現に関連する動きを解明し生体高分子の構造と機能の相関を考察することを目的とする。従来のタンパク質結晶構造解析が与える静的な構造情報とタンパク質本来の動的な特性の間の溝を埋めることが可能となり、タンパク質をはじめとする生体高分子の構造機能相関の研究に大きく寄与する。本年度は、作成した顕微分光装置を使用して色素含有タンパク質(高電位鉄イオウタンパク質、プロトン輸送タンパク質、光合成調節因子)の結晶から可視吸収スペクトルとその変化を測定した。スペクトル測定には光学密度が適切な(OD~1)結晶を使用することが重要であった。また、これらのタンパク質結晶のX線結晶構造解析をおこない、詳細な構造変化を捉えることができた。高電位鉄イオウタンパク質の解析は0.7Å分解能という大変に高い精度で行なうことができた。また、光合成調節因子の結晶構造はこれまで全く報告がなかったが、色素近傍の構造も精密に決定することができた。
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