研究概要 |
本研究課題の目的の一つである「膜蛋白質の膜界面での選択的切断」を実現する上で解決すべき課題は、強固なペプチド結合をいかにして効率的に切断するか、にある。この方法を見い出すことができれば、人工リン脂質による膜蛋白質の選択的切断を格段に改善することが出来る。そこで今年度は、ペプチド結合の効率的な加水分解法の開発を目的に検討を行った。 ルイス酸性を持つ金属と配位子との組み合わせで加水分解反応を促進し得ると考え、配位子の合成を検討した。まず、金属の配位部である1, 10-フェナントロリンと、フェノール性水酸基を併せ持つ2種類の配位子を設計しそれらの合成を完了した。次いで、これらの配位子の機能をジペプチドの加水分解で評価した。フェナントロリン部に配位させるルイス酸性を持つ金属種として、ジルコニウムを選択した。ジルコニウムのハードなルイス酸としての性質は、アミドカルポニル基の活性化に適しており、また、求核種となる水を活性化し求核力の高いジルコニウムアルコキシドを生成することが期待される。ジペプチドの基質としてGly-Pheを選択し、加水分解の収率を逆相HPLCにて、切断反応により生成したフェニルアラニンを定量することで評価した。 基質に対し、塩化ジルコニウムと合成した配位子をそれぞれ5当量用い、反応溶媒として配位子の溶解性を考慮しH_2O-MeOHを用いる条件を設定した。60℃, pH5にて反応を行ったところ、HPLCにてフェニルアラニンのピークが観測され、その収率は低いものの加水分解が起きたことがわかった。
|