海洋軟体動物タツナミガイ由来の環状デプシペプチド、オーリライドの作用機構と標的分子の探索研究を行った。前年度までの構造活性相関研究に基づき、オーリライドの活性をある程度保持した蛍光標識体およびビオチン標識体をそれぞれ合成した。蛍光標識体を用いてオーリライドの細胞内動態を調べたところ、ミトコンドリアに局在していることが分かった。さらに、ビオチン標識体を用いて、標的生体分子の探索を行ったところ、オーリライドの標的分子はミトコンドリアタンパク質のプロヒビチチンであることが明らかになった。 当研究室で単離構造決定したビセブロモアミドの合成が北京大学のYeらにより達成され、その結果ビセブロモアミドのチアゾリン部の立体化学が誤りであることが判明した。そこで、立体化学の再検討を行ったところ、チアゾリン部の立体化学が逆であることが分かった。つぎに、天然ビセブロモアミドから4種の人工誘導体を調製し、構造活性相関を検討した。その結果、ビセブロモアミドの臭素原子、フェノール性水酸基、およびケトン基は活性に重要ではないことが分かった。さらに、ビセブロモアミドを腫瘍細胞に与えると、細胞に特徴的な形態変化をもたらすことが分かった。この特徴的な形態変化は、ミウラエナミドや他の環状デプシペプチドによっても起こることが分かった。これらの環状デプシペプチドの中にはアクチンの重合を促進し、アクチン線維を安定化させるものがあったことから、ビセブロモアミドについてもアクチンへの作用を検討したところ、同様にアクチンの重合を促進することが分かった。
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