ベンゾイソクロマンキノン(BIQ)系抗生物質の基本骨格形成に関わる以下の検討を行った。BIQ系抗生物質アクチノロジン(ACT)生合成において8位の水酸化はActVA-5-ActVBの2成分系酵素が触媒すると考えられてきたが、ActVA5遺伝子破壊体から新規シャント化合物actinoperyloneが単離されたことで本系が6位酸素添加に関わる可能性が示唆されていた。本研究において、関連する遺伝子破壊体(VA-5破壊体、VB破壊体)の代謝プロフィールの精査、並びにActVA5-ActVB組替え精製タンパク系を利用したin vitro酵素反応により、本系には8位水酸化能の他に6位酸化(キノン形成)活性があることを明らかになった。6位酸化には従来からActVA-6の関与が示唆されていたのでActVA-6の組換え精製タンパクも使用してin vitro活性を比較したところ、三環性の化合物に対する酸化活性はActVA-5/ActVBの方がより高効率であることが示された。以上のことから、ACT生合成の6位酸化には2つの代替経路(ActVA-5/ActVB:主要経路、ActVA-6:副経路)が存在することが明らかとなった。ActVA-5は、その相同遺伝子が芳香族ポリケタイド生合成に関わるものしか存在せず、P450等の酸素添加酵素とは全く異なる新規クラスの酸素添加酵素に分類である。本研究が、今後の詳細な触媒機構解明において重要な知見である。研究成果は、国際学術誌に論文発表した。
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