ベンゾイソクロマンキノン(BIQ)系抗生物質の基本骨格形成に関わる以下の検討を行った。BIQ系抗生物質アクチノロジン(ACT)生合成において8位の水酸化はActVA-5-ActVBの2成分系酵素が触媒すると考えられてきたが、昨年までの研究において、関連する遺伝子破壊体(VA-5破壊体、VB破壊体)の代謝プロフィールの精査、並びにActVA5-ActVB組替え精製タンパク系を利用したin vitro酵素反応により、本系には8位水酸化能の他に6位酸化(キノン形成)活性があることを明らかになった。今年度は、ActVA5-ActVB酵素系のin vitroにおける酵素機能を更に解分したところ、ACT生合成中間体のdihydrokalafungin(DHK)に酸素添加する活性を有することが明らかになった。生成物の各種スペクトルデータからこの酸素添加はナフトキノン部分骨格の炭素-炭素二重結合をエポキシ化する活性であることが示唆された。ACT生合成ではみられない付加的な活性と思われるが、新規骨格形成を目指す観点からは極めて興味深い結果である。また、BIQ系抗生物質メダマイシン(MED)の生鮮菌放線菌Streptomyces sp.AM-7161の形質転換系条件の最適化を行い、実践的なプロトコールとして確立し論文報告した。MEDはC-配糖化結合を有し、非糖部分(アグリコン)の生合成には、ポリケタイド合成酵素による基本炭素骨格合成と修飾酵素群により一連の構造変換が含まれる。新規骨格形成のための酵素発現宿主として本菌株の活用が期待される。
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