研究概要 |
Streptomyces coelicolor A3(2)の生産する芳香族ポリケタイド抗生物質actinorhodin(ACT)は、22遺伝子で構成されるact生合成遺伝子クラスターによって生合成される。基本骨格が形成された後、構造多様性に直結する酸化還元・二量化・配糖化などの反応が生合成後期に進行する。後期修飾過程に関わる生合成酵素群の一つActVA-5は、ActVBと共に二成分系モノオキシゲナーゼとして機能し、6-deoxy-dihydrokalafunginの6位酸化・キノン形成を触媒する必須の酵素系であることを明らかにしている。本酵素系には、dihydorokalafungin(DHK)の末端カルボン酸がラクトン環化したkalafaunginを基質とする新たな酸素添加活性を見出しているが、本年度は、反応生成物である2種の化合物を大量に精製し、NMRをはじめとする各種スペクトルから両生成物の平面構造を5,14-epoxykalafungin(epoKAL)と決定することができた。なお、生成物2種は互いにジアステレオマーの関係にあり、基質であるkalafungin(KAL)がエポキシ化される際、酸素原子がKALの訂面re面どちらからでも導入し得ることが示唆された。また、DHKはアルカリ条件下で化学的にepoKAL2種のうち一方のみが生成するが、KALをpyridineに溶解してもエポキシ化反応は進行しなかった。Pyridine溶液中ではDHKのラクトン化とエポキシ化反応が協奏的に進行すると考えられると同時に、酵素的なKALのエポキシ化とは反応機構が大きく異なると考えられた。現在、生成物2種生成物の絶対構浩を検討中である。
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