ペプチドホルモンのプロセッシングにおける前駆体蛋白質の立体構造形成の解明、およびプロ領域の分子内シャペロン機能を有効利用することを目的として、本年は、以下の点に焦点を絞り、研究を行った。 1)プロウログアニリンの立体構造解析:前年度までに得られた結晶化条件を精密化し、得られた結晶について、Spring8の高輝度放射光により回折収集を行った。セレノメチオニン誘導体により位相決定し、野生型の立体構造を決定することができた。これは、ペプチドホルモン前駆体として始めての例であり、プロセッシングに限らず、分子内シャペロンおよび生理活性構造の進化について画期的な成果となった。現在、論文投稿を準備している。 2)プロペプチドの分子内シャペロン機能を利用した新規生理活性ペプチドの創作:既に得られている2種類の新規生理活性ペプチドを組込んだ前駆体蛋白質を大腸菌から大量発現させ、結晶化条件を精密化した。いくつかの結晶が得られたため、現在、回折収集実験を行っている。 3)他の前駆体蛋白質:前駆体蛋白質として、プロオピオメラノコルチンの発現系の構築、及び精製を行い、更に結晶化に成功した。Spring8での回折実験を行い、位相決定のためにセレノメチオニン誘導体を調製し、結晶化作業を行っている。本前駆体蛋白質は、ACTHやエンドルフィンなど様々なペプチドホルモンの前駆体であることから、医薬等への応用など、その構造決定の意義は大きい。また、pro-ANPについて、その前駆体を調製し、引き続き結晶化および立体構造形成の評価を行っている
|