陸上植物は、蘇苔類、シダ類、裸子植物から被子植物へと進化し、多様な種を形成している。ジテルペンは、イソプレンから生合成される2次代謝産物であり、植物ホルモンや生体防御物質などの生理活性物質として陸上植物に広く存在する。その生合成の初期段階であるジテルペン炭素骨格は、ゲラニルゲラニル2リン酸を基質として、環化酵素により構築される。この環化酵素は、被子植物では明らかにされていたが、下等な陸上植物である蘇苔類やシダ類では、不明であった。そこで陸上植物におけるテルペノイド生合成系の進化を世界に先駆けて明らかにすることを目的として、研究を推進してきた。蘇苔類の環化酵素遺伝子のクローニングに加えて、今年度は下等植物であるシダ植物イヌカタヒバからのジテルペン合成酵素遺伝子のクローニングと機能解析を行った。イヌカタヒバは、5種類のジテルペン合成酵素遺伝子を発現しており、非常に興味深いことに下等な蘇苔類タイプの環化酵素遺伝子と被子植物型の環化酵素遺伝子の両者をイヌカタヒバは持っていた。また、我々は稲のファイトアレキシンとして報告されている環状ジテルペンのモミラクトンを、蘇類ハイゴケがアレロケミカル(他感物質)として生産することを見出している。今年度は、モミラクトンの生合成中間体であるピマラジエン合成酵素の全長cDNAをクローニングすることに成功した。現在、その酵素の機能解析を行っている。
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