糖鎖はバイオマーカー探索のターゲットして期待されている。本研究ではシアル酸を有する糖タンパク質にフォーカスしたマーカー探索のアプローチとして、糖タンパク質の糖鎖の非還元末端に存在するシアル酸を介した新規なシアロ糖タンパク質の濃縮・分離法(Glycan Tail Immobilization(GTI)法)を考案し、その開発と応用を進める計画である。平成20年度は、糖ペプチドのGTI法の基礎検討として、固相担体へのシアロ糖鎖の固定化反応について検討を行った。液相反応でこれまでに得た知見をもとに1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide(EDC)を縮合剤として、シアロ糖鎖をヒドラジド基含有固相担体へ結合させる実験を行った。固相担体としては親水性ポリマーを基材とするUltraLink Hydrazide Gel(Pierce社)、AffiGel Hz(Bio-Rad社)、BlotGlyco(住友ベークライト社)を用いた。はじめに少量(5pmol)のシアロ糖鎖試料を用いて固相担体へのローディングを種々検討したが、良好な結果は得られなかった。液相反応の条件を固相反応にそのまま応用することは難しいと判断し、まず蛍光クロモフォアを有するカルボン酸を用いてローディングの最適条件を探すこととした。これは蛍光クロモフォアを持つカルボン酸が固相担体にローディングすることにより固相担体が蛍光を発するようになるので、反応結果のモニターが簡便になると考えたからである。平成21年度は、この手法により最適化した反応条件で再度、シアロ糖鎖の固定化を試み糖ペプチドの固定化へと発展させる。また、ヒドラジドビーズにアミド結合で固定化されたシアロ糖鎖はシアリダーゼで遊離することが難しいことが判った。これについては、今後、弱酸での糖鎖遊離条件を検討していく計画である。反応条件のみならず、固相担体の素材についても検討する。次に、固相担体に固定化されたシアロ糖鎖をシアリダーゼにより遊離させる条件を検討する。また、Endo-MやNグリカナーゼなど他のエンド型グリコシダーゼによる遊離を検討する。
|