糖鎖はバイオマーカー探索のターゲットして期待されている。本研究ではシアル酸を有する糖タンパク質にフォーカスしたマーカー探索のアプローチとして、糖タンパク質の糖鎖の非還元末端に存在するシアル酸を介した新規なシアロ糖タンパク質の濃縮・分離法(Glycan Tail Immobilization(GTI)法)を考案し、その開発と応用を進めている。平成21年度は、糖ペプチドのGTI法の基礎検討として、昨年度に引き続き、固相担体へのシアロ糖鎖の固定化反応について検討を行った。液相反応でWSCを用いてシアル酸をヒドラジドで修飾する場合は、シアル酸に対し過剰量のヒドラジドを加えて酸性条件で反応させることにより定量的に修飾できたが、ヒドラジドが固相に固定化されている場合は、ヒドラジドの濃度を変更することができず、結果として酸性条件下で長時間反応させざるを得ず、活性化されたシアル酸が分解してしまうということが判った。 そのため、シアル酸と固相担体の結合をアミド結合ではなく別のケミストリーで実現することを考えることとした。別途試薬を加えることなく、混合するだけで結合するアルデヒドとオキシアミンとの反応を本研究に応用することを検討することとした。そこで、シアル酸のカルボン酸を化学修飾によりオキシアミンへ変換するためのリンカーを設計し、有機化学的に合成した。平成22年度は、このリンカーを用いたシアロ糖ペプチドの修飾、固相への固定化を試み、固定化されたシアロ糖ペプチドの遊離方法、遊離されたペプチド、糖ペプチドの解析方法に関する研究を進め、方法論としての完成を目指す。
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