研究概要 |
温帯泥炭湿地池沼の水位変動と水生生物への影響 (1)平成21年9月に稚咲内砂丘林間の6湖沼(湖51,85,87,106,107,1010)から底泥試料を採取した。試料の一部は底生動物を拾い出し、残りは通気飼育してユスリカ成虫を羽化させた。ユスリカ属など大型の種類は既に羽化をした後と見られ、小型のユスリカ亜科のみが得られた。成虫で種を分類するためには、7月までに底泥試料を採取する必要があるので次年度以降の課題となった。 (2)これまでに得られた砂丘林間湖沼(湖51,65,67,85,87,106,107,112,119,125)の底生動物現存量を非計量多次元尺度構成法(NMDS)により解析した結果、カゲロウ類、イトトンボ類の多く、ヌカカ類、ヤマトヒメユスリカ族(Pentaneurini)等のグループ1,貧毛類、ヒル類、腹足類のグループ2が特定された。グループ1は水生植物の存在に関連し、グループ2は夏季に干上がりのみられた湖を特徴づけていた。安定して水をたたえている砂丘林間湖沼ではユスリカ属(Chironomus)の現存量が高かった。水位の安定している低層湿原の宮床湿原(福島県)や高層湿原の尾瀬の池塘等の底生動物はユスリカ類と貧毛類が優占していたが、稚咲内砂丘林間湖沼では貧毛類の現存量が低い点が異なった。 ユスリカ類やトンボ類は属や種へ分類することで、より精度の高い生息環境指標となりうることが示唆された。 (3)湖106は降水量の低下する夏季のみに干上がりがみられていたが、湖107、112、119では平成20年から21年にかけて、冬期の積雪のみられた時期のみ水分が涵養され、他の時期は干上がっていたと考えられ、底生動物相も更に貧弱になることが予想される。また、新たに調べた湖1010では湖の水が急速に低下した形跡が見られ、砂丘帯西側の砂層掘削が原因と考えられた。
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