研究概要 |
1.新潟市の砂丘湖・佐潟に水質調査のための4地点,ハス及びヒシの成長調査のための3地点を設置し,月1-4回の集中的な調査を行い、硝酸態窒素に着目すると,流入口では窒素の変動は0.29~5.25mgN/L(1月~12月)であり,湖内には入ると急激に低下し,開水面ではtr.~0.72mgN/L(4月~12月),流出口ではtr.~1.89mgN/L(1月~12月)で流下するにつれて,硝酸態窒素濃度は低下することが明らかとなった. 2.砂丘湖・佐潟において硝酸態窒素濃度の高い原因として,周辺では春作としてスイカ・メロンが栽培され,秋作としてダイコンが栽培される砂丘地二毛作農業による肥料からの溶脱が推定される. 3.ヒシは8月下旬から9月中旬に最盛期(葉面積指数=7.68(±1.32)~6.05(±1.72))となり,ハスは7月下旬に最盛期(葉面積指数=1.47(±0.73))となることを明らかにした.夏季にはこれうハス・ヒシと植物プランクトンによる栄養塩の吸収が盛んに行われ、栄養塩濃度は極めて低下する. 4.過去に採集されたサンプルの測定から,8月のクロロフイルa濃度の高い年にはMicrocystis, Anabaena,などの藍藻類の割合が高く(80%以上),逆にクロロフィルa濃度が25~100μg/Lの低い年には藍藻のBloomが形成されないことが判明した.植物プランクトンの増殖を制限する要因として,ヒシの生育状況が関係することが推定された. 7.湧水中の窒素安定同位体比測定の検討を安曇野市のわさび田で行った結果,硝酸態窒素濃度2.3mgN/L(n=15、sd=2.0)、δ^<15>N値+5.3‰(n=15、sd=0.7)であり化学肥料起源が53.9%であることが明らかとなった. 8.集中調査を行った佐潟を例にとると,砂丘湖の周辺では施肥量の多い砂丘地農業が行われ,地下水中に肥料成分,特に窒素が溶脱し,湧水として湖内に極めて高い濃度の硝酸態窒素が流入する.通常夏季に藍藻類によるbloomが起こるが,ヒシの生育状況によりbloomの程度が制御されるという典型的な砂丘湖の農地-肥料-地下水-湧水-水生植物-植物プランクトン-水質の関係スキームが予想され、最終年度研究への手ががりを得た.
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