平成20年度の調査は、京都市内の賀茂川上流域の雲ヶ畑白梅橋から庄田橋の間の計6カ所で生息実態調査を行った。調査は合計9回行われ、のべ54個体を捕獲した。そのうち再捕獲個体を除いた捕獲個体数は51個体(幼生も含む)であり、残りの3個体はPITタグにより確認された再捕獲個体であった。予備的に日本各地産オオサンショウウオとチュウゴクオオサンショウウオを用いてアロザイム分析した結果、GPI遺伝子座の対立遺伝子置換、MDH-2遺伝子座でチュウゴク特有の対立遺伝子が確認された。それらを参考に賀茂川産15個体のアロザイム分析を行ったところ、中国型が10個体、日本型が5個体含まれていた。中国型のうち2個体は、mtDNA分析からも中国型と判断されたが、mtDNAでは日本型とされた個体に、アロザイムでは中国型が8例、mtDNAでは中国型とされた個体に、アロザイムでは日本型が1例見つかり、それらは交雑型と考えられた。中国型または交雑型と判断された個体には成体だけでなく幼生も含まれており、ほぼ全ての調査地点で発見された事から、賀茂川上流域に広く分布して繁殖もしている実態が明らかになった。賀茂川において両種の交雑(おそらくは戻し交雑も)が進んでいることは明らかで、オオサンショウウオの遺伝的汚染が想像以上に蔓延しているだけでなく、野外調査の結果からは、純粋な日本産の餌や巣穴などの生息・繁殖に必須となる資源が、生態的特性が酷似している中国産または交雑種により奪われている可能性も強く示唆された。
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