研究概要 |
平成21年度の主要な調査として、2008年11月から2009年10月にかけて、京都市賀茂川において野外捕獲を行い、得られたオオサンショウウオ属50個体について、mtDNAのCyt b遺伝子約600塩基対の配列を決定するとともに、2酵素2遺伝子座(GPI、MDH-2)についてのアロザイム電気泳動解析を行った。これら2遺伝子座は、日本各地産オオサンショウウオとチュウゴクオオサンショウウオを用いたアロザイム分析予備実験の結果から、それぞれが特有の対立遺伝子をもち、有効な識別マーカーと判断されたものである。mtDNAとアロザイム野結果を総合して判定したところ、遺伝的に日本型、中国型、雑種と推定された個体数は、それぞれ14(28%)、6(12%)、30(60%)であった。また幼生20個体に限るとその割合はそれぞれ35%、0%、65%であったが、mtDNA、アロザイムともに日本型と判定された個体の中には、戻し交雑によって生じたものが含まれる可能性がある。遺伝的に中国型または交雑型と判断される成体・幼生は調査地点のほぼ全てで確認され、外来種がこの流域に広く分布し、繁殖している実態が再確認された。加えて、在来種と雑種との間で戻し交雑が進行している可能性も強く示唆された。賀茂川におけるオオサンショウウオの遺伝的汚染は想像以上に蔓延しており、純粋な日本産の生存に大きな打撃を与えていると判断される。2009年11月以降の資料については現在分析中である。なお、純粋に中国産、または雑種と判定された個体は野外に戻さず,施設に隔離した。また、この実態についての周知を深めるため、外来種の与える危機についての一般書の中に記述公表した。
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