最終年度の主要な調査として、2009年11月から2011年3月にかけて、京都市賀茂川において野外捕獲を行った。前年度までに得られたものと併せたオオサンショウウオ属87個体について、mtDNAのCyt b遺伝子約600塩基対の配列を決定した。同時に日本各地産オオサンショウウオとチュウゴクオオサンショウウオを用いたアロザイム分析の結果から、有効な識別マーカーと判断されている2酵素2遺伝子座(GPI、MDH-2)についてのアロザイム電気泳動解析を行った。さらに、この問題についてより詳細な解析を行うため、マイクロサテライト領域の分析も開始した。3つの手法による解析結果を総合して判定したところ、遺伝的に日本型、中国型、雑種第1代、戻し交雑による雑種第2代と推定された個体数は、それぞれ1(1.2%)、0(0%)、25(28.7%)、61(70.1%)という驚異的な結果となった。すべての解析で日本産と判定されたわずか1個体も調査河川の支流で発見されたものであり、本流に見られる個体はほとんどすべてが雑種および、戻し交雑種である可能性が強く示唆された。3年間の調査から、賀茂川におけるオオサンショウウオの遺伝的汚染は極限に達しており、純粋な日本産は絶滅寸前状態に至っていると結論される。この実態についての周知を深めるため、外来種の与える危機について、国内外での報道発表、学会.講演会での公表を行った。さらに、この事態の打開のために、文化庁、京都府、京都市に対し、対策検討会の設置を求めてきたが、ようやく認められ、平成23年度より中国産および雑種の駆除事業が行われる目処がついた。これは本研究の最大の成果と評価できる。
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