研究課題
イシカワガエルは奄美大島と沖縄本島北部に分布し、鹿児島県と沖縄県で天然記念物に、環境省レッドリストでは絶滅危惧種IB類に指定されている。本研究では絶滅が危惧されている本種について、飼育下での自然繁殖を試みるとともに、沖縄と奄美の両集団間の交配後隔離機構を調べた。今年の繁殖時期には、人工繁殖によって生まれた5年齢個体から、完全飼育下での自然繁殖によって、多数の2代目を得ることに成功した。また、交配後隔離の有無を確認するため、奄美産の普通と大型、及び沖縄産との間で交雑実験を行ったところ、奄美産雌と沖縄産雄の雑種は正常に発育するが、沖縄産雌と奄美産雄との雑種は発生初期ですべて致死になり、明確な交配後隔離が成立していることが分った。両者は遺伝的にも形態的にも明らかに分化しており、別種とするのが妥当であると考えられた。また、リュウキュウアカガエルは奄美大島、徳之島、沖縄本島および久米島に分布するカエルで、環境省レッドリストで準絶滅危惧種に指定されている。本研究では、本種内の遺伝的分化の程度と集団間の交配後隔離の有無とその程度を明らかにすることを目的とし、奄美大島と沖縄島の個体を用いて、アロザイムとmtDNA分析および交雑実験を行った。その結果、両者は遺伝的にかなり分化していることが分った。さらに、沖縄産雌と奄美産雄との交配の結果、雑種は正常に発育し、そのほとんどが雄になり、それらの精巣には、異常な大型精子や濃染核が多数観察された。また、精子形成時の減数分裂における相同染色体の行動を観察したところ、雑種では相同染色体が対合に失敗してできる一価染色体やロッド状二価染色体がかなり観察され、精子形成が異常になることが分った。以上の結果から、リュウキュウアカガエルの奄美大島産と沖縄島産とは亜種以上の分化であると考えられた。
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http://home.hiroshima-u.ac.jp/~amphibia/sumida/