研究課題
イシカワガエル(Odorrana ishikawae)は奄美大島と沖縄本島北部に分布するカエルで、鹿児島県と沖縄県で天然記念物に、環境省レッドリストでは絶滅危惧種IB類に指定されている。これまでの研究から、両島のイシカワガエルには形態・核型・生態的特徴に相違があることが示唆されている。本研究では絶滅が危惧されている本種について、飼育下での自然繁殖を試みるとともに、本種の種内分化の実態を解明するため、奄美産と沖縄産の成体を用いて形態計測、アロザイム分析、mtDNA解析及びマイクロサテライト解析を行うとともに、交雑実験により、両集団間の交配後隔離機構を調べた。2010年の繁殖期には、人工繁殖によって生まれた6年齢の人工繁殖個体から、完全飼育下での自然繁殖によって、多数の2代目を得ることに成功した。また、形態計測に基づく主成分分析の結果、奄美産と沖縄産とは形態的に明瞭な相違があること、アロザイム分析、mtDNA解析及びマイクロサテライト解析から、両集団は遺伝的にも明瞭に分化していることがわかった。さらに、交雑実験の結果、沖縄産雌と奄美産雄との雑種は発生初期ですべて致死になること、奄美産雌と沖縄産雄の雑種は正常に発育するが、成熟期に達した雑種の雄は精子形成が異常であることがわかった。以上、奄美産と沖縄産は遺伝的にも形態的にも明瞭に分化しており、生殖的にも明確な交配後隔離が成立していることから、両集団は別種とするのが妥当であると考えられる。イシカワガエルの基準産地は沖縄本島であることから、奄美産のイシカワガエルを「新種アマミイシカワガエルOdorrana splendida」として記載した。
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