本年度は、本科研の最終年度ということで、研究成果の発表に取り組むことに努めた。 当初考えていたよりも本研究に特化した研究成果の発表は時間がかかり、まだ一部しか実現していないが、本研究と並行し、関連しつつて取り組んでいた1972年のウガンダ・アジア人危機に関する研究が日本国内で出版、また海外の学術雑誌に掲載が決定し、また特に東アフリカから流入したアジア人の国内受け入れ政策に関わる部分(本研究で取り組んだ移民統合政策との関わりが深い)を研究代表者が企画人の一人として行われた国際ワークショップでの発表という形で行うことができた。イギリスにおける移民統合政策の成立過程そのものについては、研究代表者が一章を執筆したイギリメ近代史の教科書の中でその成果に関わる部分を触れることもでき、今後も、学術論文という形で継続して成果を発表して行きたいと考えている。 イギリスにおける移民統合政策に影響を与えた国内的・国外的要因のいくつかを明らかにすることで、現代にまで至る、イギリスの移民政策、ナショナルなアイデンティティの有り様、帝国・コモンウェルスとの関わりにおけるイギリス国内社会の変化に総合的な視野を持ち込む、という意味で本研究はある一定の成果を達成できたと考えている。今後、さらに反人種差別的な国際規範との関わりの中で、イギリスの人種関係政策がどのような発展の道筋をたどったのかについて、1976年法の成立など、今回は詳しく扱えなかった部分についても研究を継続していきたい。
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