本研究の目的は、ベトナム国内においてベトナム人がベトナム戦争をどのように記憶しているのかの聞き取り調査を通して、(1)「低い位置の視線」からベトナム戦争を歴史的に再検討し、(2)ベトナム戦争後の兵士の復員状況や「戦後処理」を明らかにし、(3)ベトナムでの「戦争の記憶」のあり方がどのようなものであり、戦後ベトナムにおいて如何なる政治史的・精神史的意味をもってきたかを辿ろうとするものである。これによってベトナム現代史におけるベトナム戦争の影響の様相を具体的に提示し、現代ベトナム地域研究に寄与しようとするものである。また、他の国々の戦争の記憶のあり方と比較することによって、「戦争の記憶」研究一般にも学術的に貢献することを目指している。 年度ごとの聞き取り調査テーマとしては、(1)平成20年度:戦争と宗教、(2)平成21年度:少数民族の戦争参加、(3)平成22年度:北爆の記憶、疎開の記憶、(4)平成23年度:虐殺の記憶、(5)平成24年度:知識人の戦争の記憶、戦争の語り(従軍作家と学徒兵)を予定している。
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