本研究の目的は、中央アフリカ熱帯雨林地域の農耕文化を、環境に対する適応・歴史/文化的な指向性・市場経済に対する適応・農業政策への対応の視点から総合的に捉えることである。特に植民地期と独立以降の政策への対応を中心に、20世紀の農耕文化史を地域社会の内外の変化から再構成することを目指す。 本年度は、中央アフリカに関する資料を分析するとともに、主調査地であるカメルーンに加えて、中央アフリカの農耕のルーツであり、作物を共有する西アフリカにおける現地調査を行い、中央アフリカの農耕文化と食文化の地域的な特徴について分析した。西アフリカの農業と食が、サバンナとの強い結びつきを持っているのに対して、中央アフリカの熱帯雨林では、より森林部に特化した生業と食を発達させてきたことが明らかになった。また、両者に共通するバナナ・キャッサバといった主作物の調理法もかなり異なることがわかった。これらの違いが、流通・政策などの社会史とどのように関連をもっか、今後分析を進める。 また、中央アフリカの畑地の生物多様性について歴史的に考察する英語論文"Biodiversity of Intercropped Fields in Central Equatodal African Rainforests"を執筆し、雑誌投稿中である。 さらに、仏語圏である調査地へ調査結果を還元し、さらなる情報を得るために、発表済みの論文「バナナ栽培文化のアジア・アフリカ地域間比較」を仏訳した。 経費は主として、海外調査、英文校閲、仏文翻訳、イギリスとフランスにおける参考図書の購入に充てた。
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