本年度は個人による地域調査を展開した。これに当たり、研究協力者として、大阪大学外国語学部非常勤講師の井戸根綾子氏と、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所共同研究員の宮崎久美子氏の2人も現地調査を行なった。竹村はタンザニア連合共和国のザンジバル島において、井戸根はケニア共和国のラム島において、そして宮崎はザンジバル島においてそれぞれ女性のライフヒストリー収集に当たった。各人が対象地域において、昨年度の調査で女性のオーラルヒストリーの収集にとって適当だと思われた地点に密着し、イスラームとの関わりや結婚生活の実態、家族との繋がりなどについて詳細に聞き取ることができた。また、政治との関わりもある程度把握することができた。ライフヒストリーの聞き書きに当たっては、調査対象となった女性たちが日常的に用いているスワヒリ語変種で話してもらっており、その意味で、昨年度と同様に、言語学的および社会言語学的な価値もある資料となっていると思われる。 また、昨年度に行なった調査に基づいた学術発表を、日本アフリカ学会第46回学術大会において「女性の語りから読み解く社会」と題したセッションとして行なった。竹村は、1964年のザンジバル革命前後から政治活動に関わった女性のインタビューをもとに発表した。井戸根は、2007年のケニア大統領選挙が「辺境」であるラム島の女性たちにどのような影響を与えたのかに着目し、選挙活動に何らかの形で関わった女性たちのインタビューをもとに発表した。宮崎はザンジバル島の漁村での組合活動でリーダー的存在である女性のインタビューをもとに発表した。
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