平成21年度は、昨年に引き続き、『中華人民共和国国務院公報』、『中国行政管理』『江海学刊』『農村観察』『郷鎮論壇』『中国政治』『社会学』『社会学研究』China Quartererlyといった雑誌資料、『人民日報』『新華日報』『大衆日報』等の新聞資料、その他倉成付主編『全国村務公開民主管理工作進展報告』(中国社会出版社、2009年)等といった新しく刊行される文献資料を精読し、逐次研究状況を整理した。 また、海外でのヒアリング調査に関しては、2009年7~8月にかけて山東省の農村研究者・基層政権幹部とのヒアリング調査を実施し、昨年の上海市・江蘇省の農村部の調査と比較しながら、都市化が進む農村地域で、農村基層政権におけるアクターの分化・多元化の過程の概況とその問題点の諸論点を整理した。 以上の研究活動を踏まえて、2009年7月14・15日の両日、島根県浜田市・松江市で開催されたNEARカレッジ「辺境と底辺から見る中国」において、「現代中国における格差と農村」と題する報告を行い、その研究成果の一部を発表した。 また、本年度は、市場経済化に伴う多元化が進む基層社会の政治・社会統合を進める一つのアクターとしての共産党の役割について考察を進め、とくに政治文化論の視点から共産党の基層社会に対するリーダーシップのあり方としての「徳治」の特質を分析し、山東省の基層社会の事例を取り上げてその実態を明らかにした。その研究成果の一部として、「現代中国における基層社会の再編と党の役割-都市の社区建設と政治・社会統合の試み-」(『総合政策論叢』第18号、島根県立大学総合政策学会光2010年2月、15~30頁、所収)を発表した。
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