1.研究の目的の再確認日本のブラジル人就労者(デカセギ)を事例として、外国入労働者とホームランドとの社会、経済、文化の各側面での相互作用を調査し、グローバル化時代の国境を越える人の移動がもたらす空間を越えて同時に進行する諸現象を把握すること。 2.平成20年度研究成果1)具体的内容:(1)日本国内のブラジル人とそのコミュニティ(浜松市、豊橋市、大泉町)で、就労、教育、文化・宗教生活に関する聞き取り及び観察を行い、日本のブラジル人の社会・精神生活を把握。また、文献調査を通じ母国送金に関する比較考察。これらの調査研究を通じて、外国人労働者とその子弟のホームランドの概念の検討。さらに、デカセギ現象によってもたらされた日本及びブラジルの教育の変化、エスニック集団の宗教、ブラジル文化の学習、親族および同郷出身者とのつながり、送金によるホームランドとのつながりなどの把握。(2)ブラジル(サンパウロ市、バストス市)におけるデカセギ経験者とデカセギを送り出している家族に聞き取り及び観察調査。経済的理由から始まったデカセギによって、ホームランドで肯定的結果を手にした者とそれを果たせなかった者に大別できる。今後論証を必要とするが、デカセギ現象は日系ブラジル人が新たなアイデンティティ「ニッケイ」を形成するための重要なひとつの契機となっている。2)研究の意義及び重要性:日本社会とサンパウロのブラジル社会双方に同時にもたらしている変化を、本研究を通じて把握できた。これにより人の移動の研究がより立体的に提示され、これは人の移動に関する新たな研究成果である。こうした視点から捉えることにより、一方向的で局所的ではなく、双方向的でダイナミックにグローバル化時代の人の移動が把握され、また歴史的に繰り返されてきた人の移動が新たな視点から再解釈、再評価されうる。
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