1.研究の目的:日本のブラジル人就労者(デカセギ)を事例として、外国人労働者とホームランドとの社会、経済、文化の各側面での相互作用を調査し、グローバル化時代の国境を超える人の移動がもたらす空間を越えて同時に進行する諸現象を把握すること。 2.平成21年度研究成果:1)具体的内容:(1)日本人類学で研究者5人による分科会「グローバル化時代の外国人労働者とホームランド・デカセギ・ブラジル人の事例」の代表としてかつ発表者として調査に基づく報告を行った。(2)ラテンアメリカ政経学会で研究者およびインフォーマント合計4人によるパネル・ディスカッション「ブラジル人エスニック・グループと日本社会」のコーディネイターかつ発表者として調査に基づく報告を行った。(3)慶応義塾大学東アジア研究所プロジェクト研究会に招待され、「在日ブラジル人の社会経済生活-アンケート調査から」として報告を行った。(4)5月-9月にデカセギ・ブラジル人(683人)と人材派遣会社(1388社)を対象に2008年のリーマンショック以後の在日ブラジル人の就労環境と社会・経済生活に関する数量的調査を厚生労働省と日本国際協力センターの協力を得て行った。(5)静岡県浜松市のブラジル人の調査を5回、総日数13日間行い、主として宗教生活およびコミュニティ内の社会関係の把握を行った。 3.研究の意義および重要性:(1)外国人就労者を通じてホスト社会とホームランド双方の変化を学会のを通じて提示できたことは、人の移動に関する研究の新たな成果である。(2)日本の経済不況によっておもたらされたデカセギ・ブラジル人の社会・経済的変化を数量的に提示することで、日本のデカセギ・ブラジル人の社会経済生活を実証的に把握することを可能とした。(3)日本のブラジル人社会の組織化とネットワーク化の把握は従来看過されてきた視点であるが、21年度の調査を通じて重層的な実態を把握することが可能となった。
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