本研究は、日本型と中国型という異なる産業組織モデルが移植され、競争的適応を遂げたベトナム二輪車産業を事例として、部品取引関係の変容が地場部品サプライヤーの成長に及ぼした影響を明らかにしようとする試みである。企業レベルの詳細な調査に基づき、部品取引関係の変容は地場部品サプライヤーに対し新たな参入機会を創出したが、サプライヤーが新たな取引機会を通じて自らの能力形成ひいては企業成長を達成し得たか否かは、サプライヤーの学習への投資によって説明されることが明らかにされた。本研究の成果は、日本と中国の産業組織モデルの他の途上国への移転可能性、および、地場企業の能力形成メカニズムにかかわる研究の系譜に新たな視点を提供するものである。
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