本研究の目的は、主に女性教師によって担われてきた高等学校家庭科に、1994年の高等学校家庭科男女必履修を契機に参入してきた男性教師に焦点をあて、教員養成や家庭科教育に内包するジェンダー構造とその課題を検討することにある。男女共学化が実現した家庭科教育の「男女共教」への実現に向けて、アクションリサーチの可能性を検討することを企図している。昨年度は、「家庭科教員をめざす男の会」がエンパワーメントの装置として機能する可能性が示唆された。この仮説に基づき、家庭科の男性教員の実態と、教員養成大学の家庭科教師を目指す男子学生の情報収集とともに、教員養成制度の隙間に生じる実践コミュニティの育成の育成について理論的検討を進めた。具体的には、アクションリサーチを目指す他分野の研究者や実践家とともに、海外のアクションリサーチの文献講読を継続し、アクションリサーチの理論的・方法論的フレームワークを検討した。また、家庭科教育研究者や現職の家庭科教員らと協働し、現在の高等学校家庭科をめぐる固有の課題を検討するとともに、家庭科の女性教員及び男性教員や家庭科免許取得を目指している学生らとワークショップを2都県で開催し、高校家庭科教員のネットワークの構築の具体的な検討に着手した。
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