研究概要 |
本研究は,(1)現在介護を行っている男性介護者の実態,(2)今後介護者となり得る男性の介護者になる際の自己決定要因,(3)男性が介護者になるために必要な支援の3点から男性が介護に取り組むために必要な要因を明らかにし,男性介護者により適切なサポートの在り方や,男性も女性もともに生涯を幸せに送るための生涯教育のあり方への示唆を得ることを目的とする。 本年度は、介護を体験する前の年代の介護に対する認識を問う調査を実施した。調査対象は西日本圏域に住む30歳代から60歳代の夫婦800名(400組)である。調査内容は個人的背景、介護経験の有無、夫婦の関係性、介護の意志についてである。調査実施手続きに従って800部配布した質問紙のうち、441部を回収(回収率55.1%)、うち夫婦が揃っている416部(208組)を分析対象とした。 対象者の平均年齢は40歳代後半、60歳以上の者は約1割であったので、概ね40代から50代の壮年期の夫婦が中心となる集団である。夫婦の関係性について、配偶者からどのくらい情緒的支援を受けていると感じているかを示す情緒的交流、配偶者とどのくらい信頼しあっていると感じているかを示す夫婦の信頼感、配偶者との関係にどの程度満足しているかを示す夫婦の満足感により測定し、夫婦の得点を比較した。3つの尺度得点とも中央値より高い得点を示しており、夫婦の関係性は概ね良好と推察された。夫婦の満足感得点についてのみ夫婦間で差が認められ、夫の方が高い得点を示した。介護の意志については、夫の方が得点の高い項目は、「私は妻に自分の介護をしてほしい」、「私は妻の介護ができる」、「妻は私の介護をすると思う」で、夫の方が介護に関する様々な気持ちを強く持っていた。「私は配偶者の介護ができる」という介護の可能性についてのみ妻が高得点を示した。一方自分は配偶者の介護をするという「介護意志決定」については夫婦の得点に差はなく、いずれも高い得点を示しており、また夫婦の得点の相関も中程度の正の相関が認められた。
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