2008年度に実施した研究成果は元留学生たちへの聞き取り調査と文献資料の収集であった。存命中の元留学生たちがすでに80歳を超えており、その聞き取り調査は急を要するため二回中国に出張した。 2008年9月13日〜22日、2009年2月4日〜18日に中国の北京、大連、瀋陽、済南を訪問した。中国側の研究者の協力を求め、北京大学、山東大学、大連民族学院を訪問し、本研究との関連情報(元「満州国」留学生の連絡先など)の提供やデータ整理などを依頼した。 それらの先生方の協力により北京で元「満州国」留学生であった鄭氏(男、慶応大学留学生;元北京大学教授、「満州国」総理大臣鄭孝胥の孫)と呉氏(男、陸軍士官学校卒業生;新華社著名記者)と鐘氏(女)へのインタビュー(鐘氏は電話インタビュー)を行なえた。瀋陽では史氏(女)への電話インタビューを行った(もともとは直接インタビューする予定であったが、史氏が具合が悪いという理由で変更を求めたため)。ほかに、手紙と電話で連絡を取れなかった瀋陽在住の元「満州国」女子留学生の住所を直接尋ねたが、王氏と柯氏の住居はいずれもすでに取り壊されて、現住所は不明である。もう一人の王氏は入院中で、現在は意識不明の重体のため、インタビューはできなかった。 2008年10月末に奈良女子大学(全身の奈良女子高等師範学校は積極的に「満州国」留学生を受け入れた)に行き、貴重な資料を手に入れた。また日本と中国の図書館などでも資料収集を行なった。 今年度の調査では、高齢のため健康状態の悪い人が多く、新しいインタビュー相手を探すのが急務であるという印象を強くした。幸い、北京の鄭氏の姉(アメリカ在住)も妹(北京在住)も日本留学の経験者であることが判明したので、彼女たちへのインタビューが実現できるように努力したい。
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