研究課題/領域番号 |
20510258
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
大越 愛子 近畿大学, 文芸学部, 教授 (00223777)
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研究分担者 |
井桁 碧 筑波学院大学, 情報コミュニケーション学部, 教授 (40306105)
白水 士郎 近畿大学, 文芸学部, 准教授 (10319759)
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キーワード | 少子化 / 自然主義 / 生命倫理 / 選択的中絶 / 優生思想 / ジェンダー / 社会的暴力 / 生存への選択 |
研究概要 |
本年度は主として社会的影響の観点から、生殖と身体をめぐる「自然主義」的思考の問題を調査・検討した。とりわけ日本のみならず世界的にも深刻な問題となっている「少子化」現象は、現代の自立志向の女性たちに対して出産・育児への暗黙の圧力となっている。「生殖は女性の自然」とする根強い思想をジェンダー視点から相対化するところから、「問題」としての少子化現象を再構築し、真の「対策」を模索する、という方向性を一つの軸として、研究会を二回開催した。6月の研究会では、「出生選択の倫理学」をテーマに堀田義太郎(日本学術振興会特別研究員)に発表を依頼した。そこでは障がいを理由とした選択的中絶や着床前診断の是非が批判的に検討され、分娩主体としての女性への負担の問題が明らかにされた。前年度の大越による発表「分娩・懐胎労働はいかなる労働か」における問題提起を、障がい学の論点から捉え直したものといえる。12月には李恩子(近畿大学非常勤講師)に、アメリカ滞在時に体験した出産・育児事情の報告とともに、専門であるフェミニスト神学の立場から彼の地の出生・中絶・育児をめぐる諸論争を概観してもらった。 調査活動としては、井桁碧が2010年2月に韓国の研究者ネットワークにて、韓国の少子化事情やその対策などのヒアリングを行った。3月には大越・井桁が「アウシュヴィッツ平和記念館」(福島県白坂)を訪れ、戦時における「生殖する身体」に対する社会的暴力の行使の実態と、それを「自然主義」の神話で隠蔽するレトリックの問題を、文献調査や聞き取りを通して究明した。さらに3月後半には井桁が関連して、韓国・済州島の「4.3事件」における「妊娠した身体」に向けられた暴力被害の問題を個人研究費で現地調査する予定である。
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