研究課題/領域番号 |
20510258
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
大越 愛子 近畿大学, 文芸学部, 教授 (00223777)
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研究分担者 |
井桁 碧 筑波学院大学, 経営情報学部, 教授 (40306105)
白水 士郎 近畿大学, 文芸学部, 准教授 (10319759)
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キーワード | 自然主義 / 優生思想 / ジェンダー / 生命倫理 / 身体管理 / 性別違和 / 戦争と性暴力 / ハンセン病 |
研究概要 |
本年度は、身体をめぐる「自然主義」イデオロギーによって虐げられた立場にある三様の人々、すなわち(1)性同一性障害者、(2)組織的性暴力被害者、(3)ハンセン病患者、以上に聴き取り調査を行うことによって研究課題を進めることが一つの柱となった。まず7月に、関西非正規労働組合書記長の高橋慎一氏を呼んで「性別違和をもつ人の職場における生存戦略」について発表をしてもらった。「自然」としての身体性に基づくとされる性的区別と分業が、いかに労働現場で、ひいては現行の社会制度の下で矛盾を露呈しているかを確認し、研究課題を解明する上で一つの新しい視点を得ることができた。 次に12月に、国際シンポジウム「<法廷>は何を裁き、何を求めたか性暴力・民族差別・植民地主義」(於東京外国語大学)に参加し、日本軍性奴隷制の被害女性の証言と、それを受けた討論に参加した。性欲自然主義とも呼べる言説の下、身体の搾取が合理化された経緯がよりいっそう明確にされた。同シンポについては、大越が雑誌等で報告を行った。 最後に2011年3月、ハンセン病患者の収容施設である国立療養所長島愛生園(岡山県)を訪問し、二人の入所者の方に聞き取りを行った。初年度の沖縄愛楽園に引き続いての調査であったが、同種の施設の先駆的存在であった同所での調査により、あらためて世界的には科学的・医学的根拠を欠いていた強制隔離や断種・中絶の強要の生々しい実態を学ぶことで、国家政策と医学による身体管理における「自然主義」の適用の危険性がいっそう明らかになった。最終年度ではこれを受けて、現在の医療現場における「自然主義」の諸問題に、より批判的分析を傾けたい。
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