研究課題/領域番号 |
20510258
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
大越 愛子 近畿大学, 文芸学部, 教授 (00223777)
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研究分担者 |
井桁 碧 筑波学院大学, 経営情報学部, 教授 (40306105)
白水 士郎 近畿大学, 文芸学部, 准教授 (10319759)
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キーワード | ジェンダー / フェミニズム / 自然主義 / 優生思想 / 代理出産 / 性別違和 / 戦争と性暴力 / 生命倫理 |
研究概要 |
本年度は、4年間の研究の総括としての報告集の作成を念頭に置いて、3回の研究会を行った。 第1回の研究会(於近畿大学)では、「見た目」問題の運動に関与している本学非常勤講師●玉置育子に「"顔の異形"を活動する」というテーマでの発表を依頼した。発表者は顔の差別に向き合う人々」 (ユニーク・フェイスやアルビノなどの当事者)へのインタビューに基づいて、「自然」とされる身体性が異形なるものを作り出してしまっている現状を明らかにし、彼ら彼女らが孤立から相互交流で自己アイデンティティを確立していったプロセスをまとめた。 第2回研究会(於大阪国際交流センター)では、研究分担者である2名(白水士郎、井桁碧)が、それぞれ「代理出産の倫理問題:論点整理」、「人種主義と生殖のポリティクス」というテーマで発表を行った。白水は代理出産問題における「自然」概念の維持困難さを、井桁は人種主義と結びついた優生思想が「自然主義」のレトリックを用いて差別構造の正当化の論拠となった歴史を、それぞれ解明した。 第3回研究会(於近畿大学)では、立命館大学衣笠総合研究員・堀田義太郎が「リプロダクション・セクシュアリティ・自然」というをテーマで発表を行い、中絶論争における「胎児」の視点の欠落の問題点を指摘した。討議を通してしかし、生殖医療が脱「自然」化を突き進んでいる現状に対して、中絶論争において実際は「自然主義」が根深く浸透していることがあぶり出されたように思う。 以上今年度3回の研究会を加えて、過去4年間で計8回の研究会、計6回の現地調査や海外●国内での中間報告等を行った総括として、年度末に、研究会で発表を行った研究分担者・連携研究者を中心に9名が論文・研究ノートを寄稿した「研究成果報告書」を作成、冊子として印刷、配布を行った。 生殖と身体をめぐる言説において規範として機能する「自然」概念の射程と限界を解明し、新時代へ向けた新たな規範を展望する、という本研究の当初の目標は、これをもって一定以上果たしたものと考える。
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