本研究では、イギリスにおいて草創期に大学教育を修了した女性たちのなかから、大学に教育研究職を得たり、学問界で業績を遂げた女性が出現していく過程を実証的に把握することによって、女性研究者に対する大学内外の障壁、彼女らが公的および私的領域で遭遇した問題を検討したいと考えた。女性への高等教育開放の過程については多くの先行研究があるが、アカデミック・プロフェッションに関する研究はイギリス国内でもあまりなされていない。そこで本研究では、大学就学人口が急速に拡大した時代に高等教育を経験した女性のその後の経歴を追跡することから着手した。具体的には、ケンブリッジのガートン・カレッジに焦点を絞り、在籍者名簿(Girton College Register)から、1870年代〜1900年代に同カレッジを卒業した女性のなかでカレッジスタッフや大学教師となった女性約70名を抽出して、Oxford Dictionary of National Biography等を参考にキャリアや業績を検討した。 2008年8月末〜9月上旬、資料収集のために渡英し、大英図書館およびロンドン大学での文献調査を実施した。また19世紀末に結成された女性大学人の連合組織であるBritish Federation of University Womenの本部事務所を訪れ、インタビュー調査および文献調査を行った。こうした収集した資料を分析することによって、初期の女性大学人の特性や処遇、キャリアパスの傾向性を一定程度把握できた。その成果は、2009年度以降に順次公表する。
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