大気エアロゾルは雲が形成される際に水蒸気が凝結する核として機能することで間接的に気候に影響を及ぼしている。雲の核として働くエアロゾルの形態や組成を詳しく分析するため、本研究では実際に雲の中から核となる粒子を取り出すことができる小型のCVI(Counterflow Virtual Impactor)を開発する。従来のCVIは航空機や風洞を必要とするなど観測インフラが大掛かりになりがちだったが、本計画では設計当初からCVIの利用を主として地上での利用に限定することで一切の無駄を取り除き、CVIとしては最小限のスペース、エネルギー、コストで研究遂行上十分な性能を得ることを開発コンセプトに掲げている。 本年度は主に、雲採集装置「ミニCVI」の設計と部品の調達に終始した。具体的には装置の設計に際し(1) 大型の風洞の撤廃、(2) カウンターフローに使われる合成乾燥空気ボンベを廃止しコンプレッサーと乾燥機で代用、(3) 風洞に代わって小型の真空ポンプにより試料空気を引き込むこと、(4) パーソナルコンピューターで制御できるマスフローコントローラーを採用することでコントロールユニットを省略すること、等を設計に盛り込んだ。設計にあたっては、海外の協力研究者と直接議論する場を設け、最適なノズル形状を選定するといった設計の合理化に努めた。現在、プロトタイプ加工の依頼へ向け、業者と材料、部品の選定および技術的な協議を進めており、当初の研究計画通り進行中である。
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