大気エアロゾルは雲が形成される際に水蒸気が凝結する核として機能し、雲の分布を変化させることで間接的に気候に影響を及ぼしている。雲の核として働くエアロゾルの形態や組成を詳しく分析するため、本研究では実際に雲の中から核となる粒子を取り出すことができる小型のCVI(Counterflow Virtual Impactor)を開発する。このミニCVIは、コストがかさみ大規模なインフラが必要となる航空機への搭載を想定したものではなく、山岳域での野外観測や人工的に雲を発生させられる雲チャンパー室内実験への応用を想定した小型のもので、完成の暁には未だ日本では稼働の実績がないCVIを使った投資対効果の高い研究の展開が見込まれる。今年度までの活動により、装置のハードウェアの制作は最終ステージにあり、現在は実用化に向け装置内の各種流量を制御するソフトウェアの開発に注力している。 当初年次計画に記載したとおり、平成21年度は主にCVIの試作および室内での動作試験を中心に行った。装置の試作品はすでに組みあがり、大気エアロゾルを除去し、より粒径の大きな雲粒のみを選択的に引き込むための各排気、吸気パイプ内における流量の制御実験をおこなった。小型のコンプレッサー、ポンプと接続し、コンピューター制御により安定した流量が得られるようになった。現在、最終年度での完成にむけて、CVIにより「ふるい」にかけられた雲粒から水分を除去し、粒径や濃度を測る装置や形態・組成分析用のサンプラーへ試料大気を分配する方法について検討を進めている。
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