海洋生物資源量は地理的および長短期の環境変動の影響を受けダイナミックに変化する。そのモニタリングは水産資源の持続的な利用と生物多様性の保全に必要不可欠である。そこで本研究では、海鳥の行動追跡と衛星リモートセンシング技術を用いて、海洋生物資源量の動態を追跡することを目的とする。本年度は、動物装着型GPSデータロガーを海鳥に装着することによって、利用海域および採食行動の特定をおこなった。8-10月にかけて、岩手県三貫島と新潟県粟島において、オオミズナギドリの成鳥の生態調査を行った。GPSデータロガーは、20秒ごとに動物の位置を計算し、一週間ほど記録することができる。三貫島で繁殖するオオミズナギドリは、島から20-500km離れた場所で採餌を行っていた。オオミズナギドリの移動データと衛星から得られた環境データを組み合わせることによって、採餌トリップのパターンが風やクロロフィルa濃度などに影響を受けていることが明らかとなった。また、新潟県粟島の個体は主に島の周囲で採餌を行っていたが、一部のオスは津軽海峡を抜けて北海道釧路沖まで飛翔し、採餌を行っていた。太平洋と日本海で繁殖するオオミズナギドリにとって、釧路沖は生物学的ホットスポットとなっていることが考えられる。また、採餌を終えた70羽のオオミズナギドリから餌を採取した。餌生物の分析を行い、位置データと合わせ、採餌場所の環境評価や季節変動についての解析を行っている。
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