海洋生物資源量は地理的、および、長短期の環境変動の影響を受けダイナミックに変化する。そのモニタリングは水産資源の持続的な利用と生物多様性の保全に必要不可欠である。平成21年度は、動物装着型GPSデータロガーを海鳥に装着することによって、利用海域および採食行動の特定をおこなった。GPSデータロガーは、数十秒ごとに動物の位置を計算し、一週間ほどの移動経路を記録することができる。8-10月にかけて、岩手県船越大島と新潟県粟島において、体サイズに雌雄差のある海鳥、オオミズナギドリの行動追跡を行った。その結果、太平洋側の個体群のオオミズナギドリは、雌雄共に北海道沿岸まで採餌旅行を行っていたのに対し、日本海の個体群は、雄のみが津軽海峡を抜けて同所に向かい、雌は繁殖地周辺に留まっていた。すなわち、採餌場所などの雌雄差の出現は、単に体サイズの違いによる移動能力の差で生じるのではなく、好適な採餌場所までの距離などの環境要因との相互作用によって生じることが示唆された。また、粟島で採餌を終えた70羽のオオミズナギドリから餌を採取して、餌生物をDNA分析したところ、性特異的な餌パターンが検出された。今後は、環境変動に対する高次捕食者の対応をより明確にするために、個体や個体群の移動パターンを記録するだけではなく、運動能力や認知能力などの内的状態、環境変動などの外的環境、そして採餌行動による結果としての餌を同時に記録することが必要であることが明らかとなった。
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