海洋生物資源量は地理的、および、長短期の環境変動の影響を受けダイナミックに変化する。そのモニタリングは水産資源の持続的な利用と生物多様性の保全に必要不可欠である。本研究では、オオミズナギドリに動物装着型GPSデータロガーを装着することによって、海鳥の採餌域と採食行動から、海洋環境をモニターすることを目的とした。平成22年度は、8-10月にかけて、太平洋沿岸域を利用している岩手県船越大島個体群、新潟県粟島個体群、潜在的に太平洋を利用している可能性のある瀬戸内海宇和島個体群、長崎県男女群島個体群のオオミズナギドリに対して、GPSの装着を行った。データロガーは、防水テープを用いて親鳥に接着した。海での採食が終了して戻ってきた親鳥を再度捕獲し、データロガーを回収した。一部の個体群に対しては、データロガーの回収の際、オオミズナギドリから胃内容物を吐き出させ、採食した生物に関する直接的情報を得た。オオミズナギドリの採食域を人工衛星によるクロロフィルa濃度と比較した結果、男女群島個体群については繁殖地周辺よりも基礎生産量が高かったものの、岩手、新潟個体群のものでは明瞭な関係が無かった。衛星データによって分かるのは基礎生産量や物理パラメータのみであり、こうしたパラメータ値が高いからといって、オオミズナギドリが利用する魚類(カタクチイワシなど)が多いとは限らないためだろう。すなわち、衛星リモートセンシングによる海洋観測の相補的な手段として、海鳥を用いた浮魚類の海洋モニタリングが有効であることが示唆された。
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