初年度の研究としては、「知覚行為」という観点から、相互作用主義の知覚論の検討を行う予測であったが、本年度は主として、そのための準備作業に従事することになった。 第一に、前年度に行なったM. ハイデガーとJ. J. ギブソンとの比較研究から浮上した研究課題に取り組み、その成果を論文とし発表した。すわなち、ハイデガーが彼の時代に影響力のあった生物学をどのように評価・批判したのかを明らかにし、そこから彼の哲学に見られる「生態学」的で「相互作用主義」的な概念をどのように形成したのかを分析した。この研究成果は、「ハイデガーと生物学-機械論・生気論・進化論-」として発表された。 第二に、本研究の本来の主題である知覚行為論に関しては、フランスのメルロ=ポンティが展開した知覚の現象学を素材にして、彼が分析の対象としつつも、それを批判的に検討したゲシュタルト心理学の知覚理論と、さらに、こうしたゲシュタルト心理学からやはり影響を受けつつも、それを独自の観点から乗り越えようと試みたギブソンの「生態心理学」を比較検討することを試み、その研究成果を口頭発表することを行なった。 第二の作業は、研究の第二年度も継続され、現代の「相互作用主義的な知覚研究」(ベルトス、プティらの知覚行為論)との関連を模索する作業の基礎となる予定である。
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